自宅で学ぶ決算分析

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決算分析編23 楽天グループ(その2) 損失は減少、でも資本欠損は増大

 楽天グループの202311日から1231日の本決算について紹介します。楽天グループは、1231日が決算日です。 まずは、損益計算書上の「売上収益」(「売上高」)と各種損益は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)は増えていますが、各種損益は赤字です。

 次に資産合計等、貸借対照表項目については以下の通りです。

 この表で、「(利益剰余金)」は、「資本」の内訳項目なので、カッコを付けています。また、金額がマイナスなので、金額の前に△を付けています。これは、実は、「負債・資本合計」が「資産合計」より大きくなっているので、これを調整するために「利益剰余金」をマイナスで表しているのです。表の一番下の行は、「負債・資本合計」に「利益剰余金」をプラスした金額です。「利益剰余金」のマイナスについては、図で表すと分かりやすくなります。図上は、2023年12月31日の数字です。

 損益計算書に損失が計上されると、その分、貸借対照表上の資産が「痩せる」のですが、楽天グループは、4年連続で「当期損失」を計上しているので、ついに左側の「資産合計」が、右側の「負債・資本合計」より小さくなっているのです。この差額を「資本欠損」といいます。つまり、「利益剰余金」のマイナス額は、「資本欠損」の金額であるということです。各種損失は減少していますが、依然として損失計上なので「資本欠損」は増大しています。

「利益剰余金」の額をマイナスで計上しているのは、スライド上の下から2行目の「負債及び資本合計」を1行目の「資産合計」と名目上一致させるためです。つまり貸方の出っ張り部分を「利益剰余金」の額をマイナスで計上することによって、「負債及び資本合計」を「資産合計」に名目上一致させているのです。

 この借方と貸方のアンバランスを解消するためには、今後、利益を計上する必要があります。利益が計上されると、その分、借方の資産合計が「厚く」なるからです。しかし、赤字続きなので、アンバランス解消は相当難しいと思われます。

 次に、損益計算書上の損益について売上収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上収益」(「売上高」)に対する2行目の「営業損益」の比率は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)に対する「営業損失」の割合になるので、△を付けています。「損失率」なので小さい方が良いため、比率が改善していることが分かります。

 次に、「営業収益」(「売上高」)に対する3行目の「税引前損益」の比率を見てみましょう。

 「税引前損失」の比率も改善しています。

 続いて、「営業収益」(「売上高」)に対する4行目の「当期損益」の比率を見てみましょう。

 「当期損失」の「営業収益」(「売上高」)に対する比率も改善しています。

 次に、「包括利益」の「自己資本」に対する比率を計算してみましょう。楽天グループは、IFRSで決算しているので、「資本合計」が「自己資本」を示します。

 このように、自己資本に対する「包括損失」の比率も改善しています。

 次に、セグメント別の「売上収益」と「セグメント損益」を見てみましょう。楽天グループは、「インターネットサービス」、「フィンテック」および「モバイル」の3つのセグメントに分けています。

 「モバイル」だけが、損失を計上し、その結果、合計も損失となっていることが分かります。

決算分析の事例 第22回ソフトバンクグループ(その3) 税引前損益の黒字転換、一部損益の赤字の減少

 ソフトバンクグループの2023年4月1日~2023年12月31日の第3四半期決算について分析します。

 まずは、損益計算書上の「売上高」と各種損益は以下の通りです。ソフトバンクグループは、IFRSで決算しています。

 「売上高」が増え、「税引前損益」は黒字転換していますが、下の2項目は赤字です。

 損益計算書上の「四半期損失」について「売上高」に対する比率で見てみましょう。

 「売上高」に対する「四半期損失」の比率も下落していることが分かります。次に、各種損益計算書項目と資本合計を見てみましょう。 

 「持株会社投資事業からの投資損益」は、前期黒字でしたが、今回は赤字です。「SVF事業からの投資損益」以下の2つの項目の赤字は縮小しています。税引前利益は先ほども見たように黒字に転換しています。四半期包括損益は、前期、当期、黒字が増えています。

 「資本合計」に対する「SVF事業からの投資損失」の比率は、以下の通りです。

 前期の5割近い損失が、比率で見ても当期は相当減っています。

 続いて、「資本合計」に対する四半期包括損益の比率を見てみましょう。

 前期と比べて、当期は比率も上昇しています。

 キャッシュフロー計算書を見てみましょう。次の表は、各活動によるキャッシュフローの組合せと企業の状況を表しています。 

 ソフトバンクグループの各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。

 前期は、営業活動によるキャッシュフローの黒字、投資活動によるキャッシュフローの黒字、つまり、投資資産の売却による資金を財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済に充てています。

 当期は、営業活動によるキャッシュフローの黒字では、投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大と財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済には足りないので、「現金及び現金同等物」の残高を充てているのが分かります。

決算分析の事例 第21回農林中央金庫 日本最大のヘッジファンド  増収・減益と包括損益の赤字

  農林中央金庫の2023年4月1日~2023年9月30日の第2四半期決算について分析します。

 まずは、損益計算書上の「経常収益」と各種損益は以下の通りです。

 「経常収益」は増えていますが、各種損益は減っていて、増収・減益です。損益計算書上は、減益とはいえ黒字です。一方、包括利益計算書上の「包括損失」は減ってています。

 損益計算書上の損益について経常収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「経常収益」に対する3行目の「経常利益」の比率は以下の通りです。

   

  増収・減益のため、「経常収益」に対する「経常利益」の比率は下落していることが分かります。

 次に、「経常収益」に対する4行目の半期純利益の比率を見てみましょう。

 この比率も下落しています。

 続いて、貸借対照表上の「有価証券」、「その他有価証券評価差額金」、純資産を見てみましょう。

 「有価証券」の額が4兆4億円近く増え、「その他有価証券評価差額金」のマイナスも大きくなっている一方、純資産が減っています。

 次に純資産に対する包括損失の比率を見てみましょう。包括損益とは、下図にあるように、期首と期末の純資産の増減額です。

 そこで、包括損益については、売上高に対する比率ではなく、純資産に対する比率を計算します。

 「包括損失」の比率なので、カッコを付けています。純資産が減る一方で、包括損失も減っているため、比率は大きく下落しています。

 次に、キャッシュフロー計算書を見てみましょう。次の表は、各活動によるキャッシュフローの組合せと企業の状況を表しています。

 農林中央金庫の各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。

 前期は、営業活動によるキャッシュフローの赤字と財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済を、投資活動によるキャッシュフローの黒字、つまり、投資資産の売却による資金で埋めています。足りない分は、「現金及び現金同等物」の残高によって埋めています。

 当期は、営業活動によるキャッシュフローの黒字では、投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大と財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済には足りないので、「現金及び現金同等物」の残高を充てているのが分かります。

 

決算分析の事例 第20回ソフトバンクグループ(その2) 増収と税引前利益の赤字転落、一部損益の赤字の減少

 ソフトバンクグループの2023年4月1日~2023年9月30日の第2四半期決算について分析します。

 まずは、損益計算書上の「売上高」と各種損益は以下の通りです。ソフトバンクグループは、IFRSで決算しています。

 「売上高」増えていますが、「税引前利益」は赤字、各種損失も増えています。

 損益計算書上の「四半期損失」について「売上高」に対する比率で見てみましょう。

「売上高」に対する「四半期損失」の比率も上昇していることが分かります。次に、各種損益計算書項目と資本合計を見てみましょう。 

 「持株会社投資事業からの投資損益」は、前期黒字でしたが、今回は赤字です。「SVF事業からの投資損益」以下の2つの項目の赤字は縮小しています。税引前利益は先ほども見たように赤字に転落しています。四半期包括損益は、前期、当期、黒字ですが、黒字が減っています。

 「資本合計」に対する「SVF事業からの投資損失」の比率は、以下の通りです。

 前期の4割近い損失が、比率で見ても当期は相当減っています。

 続いて、「資本合計」に対する四半期包括損益の比率を見てみましょう。

 前期と比べて、当期は比率が大幅に減っています。

 次に、キャッシュフロー計算書を見てみましょう。次の表は、各活動によるキャッシュフローの組合せと企業の状況を表しています。

 ソフトバンクグループの各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。

 前期は、営業活動によるキャッシュフローの黒字、投資活動によるキャッシュフローの黒字、つまり、投資資産の売却による資金を財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済に充てています。

 当期は、営業活動によるキャッシュフローの黒字では、投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大と財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済には足りないので、「現金及び現金同等物」の残高を充てているのが分かります。

決算分析の事例⑲楽天グループ P/Lも厳しいけど、B/Sも厳しい決算

 楽天グループの2023年1月1日から9月30日の第3四半期の決算について紹介します。楽天グループは、12月31日が決算日なので、第3四半期末は9月30日です。

 まずは、損益計算書上の「売上収益」(「売上高」)と各種損益は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)は増えていますが、各種損益は赤字です。

 次に資産合計等、貸借対照表項目については以下の通りです。

 この表で、「(利益剰余金)」は、「資本」の内訳項目なので、カッコを付けています。また、金額がマイナスなので、金額の前に△を付けています。これは、実は、「負債・資本合計」が「資産合計」より大きくなっているので、これを調整するために「利益剰余金」をマイナスで表しているのです。表の一番下の行は、「負債・資本合計」に「利益剰余金」をプラスした金額です。「利益剰余金」のマイナスについては、図で表すと分かりやすくなります。図上は、2023年9月30日の数字です。

 

 損益計算書に損失が計上されると、その分、貸借対照表上の資産が「痩せる」のですが、楽天グループは、4年連続で「当期損失」を計上しているので、ついに左側の「資産合計」が、右側の「負債・資本合計」より小さくなっているのです。この差額を「資本欠損」といいます。つまり、「利益剰余金」のマイナス額は、「資本欠損」の金額であるということです。

 「利益剰余金」の額をマイナスで計上しているのは、スライド上の下から2行目の「負債及び資本合計」を1行目の「資産合計」と名目上一致させるためです。

つまり貸方の出っ張り部分を「利益剰余金」の額をマイナスで計上することによって、「負債及び資本合計」を「資産合計」に名目上一致させているのです。

 この借方と貸方のアンバランスを解消するためには、今後、利益を計上する必要があります。利益が計上されると、その分、借方の資産合計が「厚く」なるからです。しかし、赤字続きなので、アンバランス解消は相当難しいと思われます。

 次に、損益計算書上の損益について売上収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上収益」(「売上高」)に対する2行目の「営業損益」の比率は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)に対する「営業損失」の割合になるので、△を付けています。「損失率」なので小さい方が良いため、比率が改善していることが分かります。

 次に、「営業収益」(「売上高」)に対する3行目の「税引前損益」の比率を見てみましょう。

 「税引前損失」の比率も改善しています。

 続いて、「営業収益」(「売上高」)に対する4行目の「四半期損益」の比率を見てみましょう。

 「四半期損失」の「営業収益」(「売上高」)に対する比率も改善しています。

 次に、「四半期包括利益」の「自己資本」に対する比率を計算してみましょう。楽天グループは、IFRSで決算しているので、「資本合計」が「自己資本」を示します。

 このように、自己資本に対する「四半期包括損失」の比率も改善しています。

 次に、セグメント別の「売上収益」と「セグメント損益」を見てみましょう。楽天グループは、「インターネットサービス」、「フィンテック」および「モバイル」の3つのセグメントに分けています。

 「モバイル」だけが、売上収益を上回る損失を計上し、その結果、合計も損失となっていることが分かります。

決算分析の事例 第18回東芝 減収と一部損益の赤字

   東芝の2023年4月1日~2023年6月30日の第1四半期決算について分析してみたいと思います。東芝は、米国基準で連結決算を行っています。

 まずは、損益計算書上の「売上高」と各種損益、および資本合計は以下の通りです。なお、左の資本合計は、2023年3月31日時点、右の資本合計は、2023年6月30日時点の数字です。

 「売上高」は減っています。営業損益は、前期赤字だったものが当期黒字になっていますが、その他の損益は前期黒字だったものが、当期は赤字です。

 損益計算書上の損益について「売上高」に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上高」に対する2行目の「営業損益」の比率は以下の通りです。

 前期は赤字だったので、カッコを付けています。

 次に、「売上高」に対する3行目の「持分法による投資利益」の比率を見てみましょう。まず、「持分法による投資利益」については、下図に示すように、関連会社(B社)が利益を計上したとき、A社は、その利益額に対する持分相当額だけ貸借対照表に借方記入するとともに損益計算書の「持分法による投資損益」に計上します。

 「売上高」に対する3行目の「持分法による投資利益」の比率は、以下の通りです。

 この比率は当期が赤字だったので、カッコを付けています。

 続いて、「売上高」に対する「四半期純損益」の比率を見てみましょう。

 この比率も当期は赤字だったので、カッコを付けています。

 次に自己資本に対する包括損益の比率を見てみましょう。包括損益とは、下図にあるように、期首と期末の純資産の増減額です。東芝は、米国基準のため、期首と期末の「資本合計(自己資本)」の増減額となります。

 そこで、包括利益については、売上高に対する比率ではなく、「資本合計(自己資本)」に対する比率を計算します。

 この比率も当期は赤字だったので、カッコを付けています。

 次に、キャッシュフロー計算書を見てみましょう。次の表は、各活動によるキャッシュフローの組合せと企業の状況を表しています。

 東芝の各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。

 前期も当期も、営業活動によるキャッシュフローの黒字を投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大と財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済に充てているのが分かります。余剰については、「現金及び現金同等物の残高」がその分増大しています。








 

決算分析の事例 第17回日本郵船 日本最大の海運会社  減収と未曾有の減益

 日本郵船の2023年4月1日~2023年6月30日の第1四半期決算について分析してみたいと思います。

 まずは、損益計算書上の「売上高」と各種損益、および純資産は以下の通りです。なお、左の純資産は、2023年3月31日時点、右の純資産は、2023年6月30日時点の数字です。

 「売上高」も各種損益も減っていて、減収・減益です。

 損益計算書上の損益について「売上高」に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上高」に対する2行目の「営業利益」の比率は以下の通りです。

 減収・減益で、「売上高」に対する「営業利益」の比率も大きく減少していることが分かります。

 次に、「売上高」に対する3行目の「持分法による投資利益」の比率を見てみましょう。まず、「持分法による投資利益」については、下図に示すように、関連会社(B社)が利益を計上したとき、A社は、その利益額に対する持分相当額だけ貸借対照表に借方記入するとともに損益計算書の「持分法による投資損益」に計上します。

 「売上高」に対する3行目の「持分法による投資利益」の比率は、以下の通りです。

 

 続いて、「売上高」に対する「経常利益」の比率を見てみましょう。

 この比率も大きく下落しています。

 次に純資産に対する包括利益の比率を見てみましょう。包括利益とは、下図にあるように、期首と期末の純資産の増減額です。

 そこで、包括利益については、売上高に対する比率ではなく、純資産に対する比率を計算します。

 純資産が増えた一方で、包括利益が減っているため、比率は大きく下落しています。