前回は、収益性分析の指標である売上高利益率について学びました。今回は、貸借対照表と安全性の指標である当座比率、流動比率、固定比率、固定長期適合率について見ていきましょう。これらの比率は、貸借対照表の数値から求められます。そこで、まず、貸借対照表について見ていきましょう。
(1)「資金」から見た貸借対照表
貸借対照表を「資金」という観点から見ると、貸方(右側)は、資金がどのような源泉から調達されているか(資金源)を示しています。貸方には、負債と純資産があります。負債は、返済を必要とします。一方、純資産は、出資された資金と過去の利益の蓄積されたものからなります。したがって、返済を前提としたものではありません。
借方(左側)は、資金がどのような資産に投下されているか(資金の運用)を示しています。借方には資産があります。貸借対照表は、資金源と資金の運用、すなわち、企業の財政状態を示します。
資産と負債については,流動・固定という区分があり,貸借対照表にとって重要な区分です。
(2)流動比率
次に、流動比率について見ていきましょう。当座資産と棚卸資産とを合わせて流動資産といいます。
流動比率は、以下の算式で求められます。
流動比率 = ─────── ×100
流動負債
流動比率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
流動比率については、分子が「現金+比較的早く現金になる資産」である流動資産で、分母が「比較的早く返済期限が来る借金」である流動負債なので、一般的には100%以上が望ましいとされます。
しかし、業種によってどれくらいが望ましいかは、異なるので、業界の平均値と比較する必要があります。また、業種によっては、100%未満でも安全性に問題がない場合もあります。具体的には、スーパーマーケット業界です。したがって、関西スーパーマーケットは、100%未満ですが、安全性について問題はありません。
(3)固定比率
固定比率とは、固定資産に投下された資金がどのくらい長期的な資金で賄われているかをあらわします。固定資産は、取得してからそれが現金化するまで比較的長期間を要します。したがって、その取得のための資金は、資産の現金化の後に返済できればそれが望ましいことになります。さらに、返済を前提としない自己資本で賄われていれば理想です。
純資産とは、資産から負債を差し引いた額です。純資産のうち、株主資本と評価・換算差額等の合計額は、自己資本と呼ばれます。自己資本は、企業の元手と過去の利益の蓄積分で、返済を前提としません。
純資産の部(連結貸借対照表)の内訳
1 |
株主資本 |
2 |
その他の包括利益累計額 |
3 |
|
4 |
非支配株主持分 |
固定比率は、以下の算式で求められます。
固定資産
固定比率 (%) = ──────── ×100
固定比率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
固定比率は、100%を下回っていることが望ましいとされます。100%を超えている場合は、固定資産が自己資本のみでは賄われていないことを意味します。次に、固定長期適合率について見ていきましょう。
(4)固定長期適合率
返済までの期限が比較的長期の固定負債を加えた数字で、固定資産が賄われているかどうかを見るのが固定長期適合率です。
固定長期適合率は、以下の算式で求められます。
固定資産
固定長期適合率 (%) = ────────────── ×100
なお、固定負債とは、仕入債務以外の債務のうち,決算日の翌日から返済までの期間が1年を超える債務です。
固定長期適合率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
【演習問題解答】
演習問題Ⅰ解答:Aがしまむらで、Bが関西スーパーマーケットです。
演習問題Ⅲ解答:Aが関西スーパーマーケットで、Bがしまむらです。
演習問題Ⅳ解答:Aが関西スーパーマーケットで、Bがしまむらです。
通常は、固定資産が固定負債と自己資本によって賄われていなければ、固定資産が現金化する前に固定負債の返済が巡ってくる可能性があり、安全性に問題があると判断されます。しかして、スーパーマーケット業界については、一般的に固定長期適合率が100%を多少超えていても問題ありません。