自宅で学ぶ決算分析

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自宅で学ぶ決算分析 第2回 100円売っていくらがもうけ?(売上高利益率)

 企業は利益稼得を重要な目的として行動しています。したがって,利益稼得能力,つまり収益性が,投資はもちろん,その他の融資や取引開始といった行動にとっても大事です。

 売上高利益率は,もっとも分かりやすい収益性を判断するための経営指標です。例えば,売上高利益率が10%であれば,その企業が100円のものを売って,そのうちの10円がもうけだということです。売上高利益率は,以下の算式で求められます。

 

           利益

 売上高利益率 = ──────── × 100

                 売上高

 

 売上高利益率を図で表すと図表1のようになります。

 売上高利益率を求める算式の分母は常に「売上高」ですが,分子に入る「利益」によっていくつかの売上高利益率が計算され,それぞれその値の意味合いに違いがあります。以下では,下掲の4つの利益,そしてそれを分子とする4種の売上高利益率について見ていきましょう。

 (1)売上総利益

 売上総利益は,売上高から売上原価のみを控除した金額です。売上総利益は,業界における上位に位置する企業ほど利幅が大きくなります。なぜなら,販売市場で有利なポジションにあれば,販売価格を比較的高く設定することができ,また売上が多ければ,調達市場で大量に安価で調達することができるからです。 

 売上総利益を図で表すと図表2のようになります。

 


売上総利益

 

 売上総利益を分子とする売上高利益率が売上総利益率です。売上総利益率は同業他社比較に利用されます。なぜなら,売上総利益率は,売上規模の影響を受けることなく,上述のように市場におけるポジションの強弱を示すからです。 また,年次比較においては,市場における商品競争力の変化や当該会社のポジションの変動を示します。売上総利益率は,以下の算式で求められます。

          売上総利益            

売上総利益率 = ────────  ×100 

                     売上高 

 売上総利益率について,次の演習問題を解いてみて下さい。

 解答時間1分で考えてみてください。

 解答は,文末にあります。

 

(2) 営業利益

 営業利益は,仕入・生産活動および販売・経営管理活動からなる「本業」による利益を示します。ビジネスによっては,広告などの販売費に多く振り向けることが要求されます。その場合,営業利益はその分小さくなります。

 営業利益を図で表すと図表3のようになります。

 


売上高営業利益率

 

 営業利益を分子とする売上高利益率が売上高営業利益率です。営業利益が本業によるもうけであるため,売上高営業利益率は,異業種間の比較も可能です。売上高営業利益率は,以下の算式で求められます。

             営業利益            

売上高営業利益率 = ──────  ×100 

                              売上高 

 

 また,売上高販売費及び一般管理費率は,以下の算式で求められます。

                                                   販売費及び一般管理費  

売上高販売費及び一般管理費率 = ─────────────────  ×100 

                                                          売上高 

 

 売上高営業利益率について,次の演習問題を解いてみて下さい。

*両社の数値は、公表されている「有価証券報告書」に拠るものです。

 解答時間1分で考えてみてください。

 解答は,文末にあります。

 

(3)経常利益

 営業利益に財務活動の結果、すなわち、営業外収益を加算し、営業外費用を控除した経常的活動による儲けが、経常利益です。本業と並んで、財務活動も企業にとって不可欠な経常的活動であり、経常利益は、本業と財務活動の結果を示します。一般に「ケイツネ」と呼ばれ、重視される利益の1つです。

 本業を営むにあたって,ビジネスの継続に必要な運転資金の一時的不足を埋めるといった財務活動は,本業ではないものの,重要な日常的活動です。支払期限が巡ってくる負債を返済するための資金を準備することを資金繰りといいます。

 また、次の支払まで運用可能な余剰資金については、遊ばせておくことなく、銀行に預けたり株式を買ったりして収益を生むよう運用することが不可欠です。このような資金繰りと余剰資金の運用の結果が、営業外収益・営業外費用です。

 

売上高経常利益率

 売上高経常利益率は、営業外収益・営業外費用含めたその会社の経常的な収益力を示します。会社の業績の将来予測にも利用されるとともに、業績評価の最も一般的な指標です。売上高経常利益率は、以下の算式で求められます。

            経常利益            

売上高経常利益率 = ────────  ×100 

                       売上高 

 

 営業外収益計上の実例を見てみましょう。住友倉庫は、株式を沢山保有しているので、多額の配当金が入ってきます。

 本業からのもうけである営業利益に加えて、上掲のように、22億3千8百万円の受取配当金(営業外収益)があるので、経常利益は、135億5千2百万円です。

 

(4)当期純利益

 経常利益に特別利益を加算し、特別損失を控除したものが、税引前当期純利益です。税引前当期純利益から、法人税等を控除し、法人税等調整額を加減して当期純利益が表示されます。当期純利益は、損益計算書の最終行に示されるボトムラインです。 すなわち、損益計算書上、最終的な利益です。 

 特別利益・特別損失の内容は、臨時利益・臨時損失です。例えば,固定資産が帳簿価額(未償却残高)以上で売れれば,その差額が固定資産売却益(特別利益),それ以下でしか売れなければ固定資産売却損(特別損失)となります。

 

売上高当期純利益率

 利益の一部は、株主に分け前として配当されます。売上高当期純利益率は、株主に対する配当の財源がどの程度の効率で獲得されたかを示します。売上高当期純利益率は、以下の算式で求められます。

             当期純利益            

売上高当期純利益率 = ────────  ×100 

                         売上高 

 

(5)各種売上高利益率の特徴

 これまで見てきた各種売上高利益率の特徴をまとめると、以下のようになります。

売上総利益率~同業他社との比較を売上規模の影響を受けることなく行える。マーケットにおける、その会社の強さ弱さを示します。

売上高営業利益率~その会社の財務構造の影響を受けることなく計算した利益率です。本業からの利益を使うため異業種間比較も可能です。

売上高経常利益率~財務コストも含めたその会社の経常的な収益力を示す。会社の業績の将来予測にも利用されるとともに、業績評価の最も一般的な指標です。

売上高当期純利益率~最終的な株主に対する配当財源がどの程度の効率で獲得されたかを示します。

 

【演習問題解答】

演習問題Ⅰ解答

 

Aがカルビーで,Bが湖池屋です。

 カルビーは,製菓メーカーの中で売上高がトップです。したがって,売上総利益率について,湖池屋よりも良い数値となっています。


演習問題Ⅱ解答

 Aが資生堂,Bがキッコーマンです。資生堂の方が、販売費及び一般管理費にお金をかけていることが分かります。