今回は、効率性の指標である各種の回転率について見ていきましょう。回転率は、損益計算書と貸借対照表の数値から求められます。
各種資産の回転率を求める算式の分子は常に「売上高」です。分母に入る資産によって様々な回転率が求められます。以下では、①売上債権回転率(売上債権回転日数)、②棚卸資産回転率(棚卸資産回転日数)、③仕入債務回転率(仕入債務回転日数)、そして④キャッシュ化循環日数について見ていきましょう。
①売上債権回転率(売上債権回転日数)
商品を現金と引き換えに販売するのが、現金販売です。一方、例えば、5月1日に得意先に商品を引き渡し、代金は1ヶ月の6月1日に受け取る場合、当社には、「売掛金」という債権が生じます。
商品と交換に手形を受け取り、その手形が一定期間の後、現金化する場合、当社には受取手形という債権が生じます。売掛金と受取手形を合わせて売上債権といいます。
売上債権回転率は、以下の算式で求められます。
売上高
売上債権回転率(回) = ───────────
回転率は、高いほど良いのですが、慣れないとピンとこないかもしれません。そこで、365を回転率で割ることによって売上債権回転日数が求められます。これは、商品等を引き渡してから販売代金を受け取るまでの平均日数を示します。
売上債権回転日数 = 365 ÷ 売上債権回転率
企業にとって、売上債権回転日数が短いほど良いことは言うまでもありません。当該期間は、得意先に無利息で資金を貸し付けているのと同じだからです。売上債権回転日数を無視して、無理に売上を伸ばそうとすると、黒字倒産ということにもなりかねません。
売上債権回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
棚卸資産とは、在庫調査によってその有高が確定される資産です。
流通業の場合,ビジネスは、前回の授業の図表3に示したように,モノとカネの対流として表すことが出来ます。
仕入れた商品が、顧客に売れるまで「在庫」として企業に留まります。ニーズのある商品を仕入れれば、在庫として留まる期間は短くなります。逆にニーズのない商品を仕入れてしまうとデッドストックとなり、いつまでも企業内に留まることになります。
棚卸資産回転率は、以下の算式で求められます。
売上高
棚卸資産回転率(回) = ─────────
棚卸資産回転日数は、棚卸資産回転率を求め、365をその比率で割れば、日数として算出されます。例えば、棚卸資産回転日数が50日と計算されたとすると、商品購入後、平均して50日後に売れていることを示しています。この指標は、短いほど良いことになります。
棚卸資産回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
既に述べたように、流動負債は「比較的早く返済期限が来る借金」です。流動負債には、(1)仕入債務と(2)その他の流動負債とがあります。以下では、(1)仕入債務について見ていきましょう。
商品を現金と引き換えに仕入れるのが、現金仕入です。一方、例えば、7月1日に仕入先から商品の引き渡しを受け、代金は1ヶ月の8月1日に支払う場合、当社には、「買掛金」という債務が生じます。
商品と交換に手形を振り出し、その手形について一定期間の後、現金で決済する場合、当社には支払手形という債務が生じます。買掛金と支払手形を合わせて仕入債務といいます。
仕入債務回転率は、以下の算式で求められます。
売上高
仕入債務回転率(回) = ───────────
買掛金+支払手形
365を回転率で割ることによって仕入債務回転日数が求められます。これは、商品等を仕入れてから販売代金を支払うまでの平均日数を示します。
仕入債務回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
④キャッシュ化循環日数
仕入から販売代金回収までの日数と仕入から仕入代金支払いまで日数との差が、キャッシュ化循環日数です。通常は、下掲のスライドにあるように、仕入から販売代金回収までの日数の方が長くなり、販売代金回収前に仕入代金支払いが必要となります。その差の日数、資金不足が生じることになります。
キャッシュ化循環日数について、次の演習問題を計算してみて下さい。
解答時間3分で計算してください。
演習問題Ⅳ解答:
しまむらのキャッシュ化循環日数は、以下の通りです。
関西スーパーマーケットのキャッシュ化循環日数は、以下の通りです。
前述のように、通常は、仕入から販売代金回収までの日数の方が長くなり、販売代金回収前に仕入代金支払いが必要となります。しかし、スーパーマーケット業界では、関西スーパーマーケットのように、仕入から販売代金回収までの日数と仕入から仕入代金支払いまで日数との差について、仕入から販売代金回収までの日数の方が短いので、販売代金回収後に仕入代金を支払えばよいことになります。その差の日数、資金余裕が生じます。そのため、先ほど求めた流動比率が100%未満であっても、安全性に問題はないのです。
【演習問題解答】
演習問題Ⅰ解答:Aが関西スーパーマーケットしまむらで、Bしまむらがです。
両社の売上債権回転率と売上債権回転日数は、以下の通りです。
演習問題Ⅱ解答:Aが関西スーパーマーケットしまむらで、Bしまむらがです。
演習問題Ⅲ解答:Aがしまむらで、Bが関西スーパーマーケットです。