前回の授業では、各種回転率について学びました。今回は、安全性の比率である自己資本比率、そして収益性の指標である総資本利益率と自己資本利益率について見ていきましょう。
第4回の最後のところで、総資本営業利益率について説明しました。元手(資本) に対するもうけ(利益)の比率である資本利益率のうち、分母が「総資本」で、分子が「営業利益」の資本利益率が、総資本営業利益率でした。つまり、総資本営業利益率は、以下の算式で求められました。
営業利益
総資本営業利益率 = ──────────────── × 100
総資本(資産の部合計)
セブンアンドアイとトヨタの総資本営業利益率は、以下の通りでした。
資本に対する利益の比率である資本利益率のうち、分母が「総資本」で、分子が「経常利益」の資本利益率は、総資本経常利益率です。総資本経常利益率は、以下の算式で求められます。
経常利益
総資本経常利益率 = ──────────────── × 100
総資本(資産の部合計)
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
(1)自己資本比率
前回説明したように、純資産とは、資産から負債を差し引いた額です。純資産の部は,株主資本,評価・換算差額等および新株予約権に分類して記載しなければなりません。このうち、株主資本と評価・換算差額等の合計額は、自己資本と呼ばれます。
総資本に対する自己資本の割合は自己資本比率と呼ばれ,企業の安全性を示す指標とされています。
貸借対照表の貸方は「資金源」を示しますが,そのうち他人資本は端的にいえば借金であるため返済が必要であるのに対し,自己資本は基本的に返済を前提としません。したがって,総資本に占める自己資本の割合が高いほど安全性が高いと判断されるのです。
自己資本比率は、以下の算式で求められます。
自己資本比率 = ──────────────── × 100
総資本(資産の部合計)
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
資本に対する利益の比率である資本利益率のうち、分母が「自己資本」で、分子が「当期純利益」の資本利益率は、自己本利益率(Return on Equity : ROE)です。自己資本利益率は、以下の算式で求められます。
自己資本利益率 = ──────────────── × 100
自己資本(純資産の部合計)
解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。
いま、横浜商事と神戸物産が、両社ともほぼ同じ資産規模で、売上高もほぼ同じとしましましょう。どちらも当期純利益は等しいとします。しかし、横浜商事は、ビジネスに必要な資金を株式発行による自己資本で調達しているのに対して、神戸物産は、資金を銀行借入による他人資本で調達しているとします。
株式発行による資金調達と銀行借入によるそれとは、資金調達という点では違いはありません。しかし、借入による他人資本については、利息の支払が必要です。それに対して、株式発行による自己資本については、もうけがあれば配当しますが、配当はもうけの分け前なので、費用とはなりません。
借入によって資金を調達している会社の場合,当然,自己資本は絶対額でも小さくなります。そうすると自己資本利益率(ROE)の算出の際、分母が小さくなるため,自己資本利益率はよい数値となります。
この点で、神戸物産は有利になります。自己資本利益率を比較する場合,このことも考慮しておかなければ実態を見誤りかねません。
自己資本比率が低い湖池屋と高いカルビーについては、自己資本利益率で逆転は起こっていませんが、総資本経常利益率よりも自己資本利益率では差が少し縮っていることが分かります。
【演習問題解答】