決算報道では見えない姿 自宅でできる決算分析

決算報道では見えない姿を見るために自分で会社の決算分析ができるようになるブログです。

決算分析の事例 第4回第一生命ホールディングス 増収・減益と営業キャッシュフローの赤字

   第一生命ホールディングスの2022年4月1日~2023年3月31日の本決算について分析してみたいと思います。

 まずは、損益計算書上の「経常収益」と各種損益は以下の通りです。

 「経常収益」は増えていますが、各種損益も減っていて、増収・減益です。包括損益は、前期、当期とも「包括損失」が計上され、当期は前期の10倍以上になっています。

 損益計算書上の損益について経常収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「経常収益」に対する2行目の「経常利益」の比率は以下の通りです。

 増収・減益のため、「経常収益」に対する「経常利益」の比率は下落していることが分かります。

 次に、「経常収益」に対する3行目の当期純利益の比率を見てみましょう。

 この比率も下落しています。

 続いて、「有価証券」、「その他有価証券評価差額金」および「純資産」の金額を見てみましょう。

 「有価証券」の金額は、4兆円以上減り「その他有価証券評価差額金」の金額も4兆円以上減少しています。また、「純資産」の金額も、減っていることが分かります。

 次に、キャッシュフロー計算書を見てみましょう。

 前期も当期も、投資活動によるキャッシュフローの黒字、つまり投資資産の売却によって得られた資金を営業キャッシュフローの赤字の補填、そして、財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済に充てているのが分かります。当期は、投資キャッシュフローの黒字だけでは足りないので、その分、「現金及び現金同等物の残高」が減少しています。

決算分析の事例 第3回三井住友フィナンシャルグループ 増収・増益と営業キャッシュフローの赤字

 三井住友フィナンシャルグループの2022年4月1日~2023年3月31日の本決算について分析してみたいと思います。

 まずは、損益計算書上の「経常収益」と各種損益は以下の通りです。

 「経常収益」も各種損益も増えていて、増収・増益です。

 損益計算書上の損益について経常収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「経常収益」に対する2行目の「経常利益」の比率は以下の通りです。

 増収・増益ながら、「経常収益」に対する「経常利益」の比率は下落していることが分かります。

 次に、「経常収益」に対する3行目の当期純利益の比率を見てみましょう。

 この比率も下落しています。

 続いて、「有価証券」、「その他有価証券評価差額金」および「純資産」の金額を見てみましょう。

 「有価証券」の金額は、5兆円以上減り「その他有価証券評価差額金」の金額も減少しています。一方、「純資産」の金額は、増えていることが分かります。

 次に、キャッシュフロー計算書を見てみましょう。

 左の期間には、営業キャッシュフローの黒字と「現金及び現金同等物」の残高によって投資活動によるキャッシュフローの赤字、つまりビジネスの拡大が賄われいることが分かります。さらに、財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済も行われています。

 右の期間には、投資活動によるキャッシュフローの黒字、つまり投資資産の売却によって得られた資金を営業キャッシュフローの赤字の補填、そして、財務活動によるキャッシュフローの赤字、つまり借金の返済に充てているのが分かります。

決算分析の事例 第2回楽天グループ

 楽天グループの2023年1月1日から3月31日の第1四半期の決算について紹介してみたいと思います。

 まずは、損益計算書上の「売上収益」(「売上高」)と各種損益は以下の通りです。

 

「売上収益」(「売上高」)は増えていますが、各種損益は赤字です。

 損益計算書上の損益について売上収益に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。1行目の「売上収益」(「売上高」)に対する2行目の「営業損益」の比率は以下の通りです。

 「売上収益」(「売上高」)に対する「営業損失」の割合になるので、△を付けています。比率が改善していることが分かります。

 次に、「営業収益」(「売上高」)に対する3行目の「税引前損益」の比率を見てみましょう。

 この比率も改善しています。

 続いて、「営業収益」(「売上高」)に対する4行目の「四半期損益」の比率を見てみましょう。

 「四半期損失」の「営業収益」(「売上高」)に対する比率も改善しています。

 次に、「四半期包括利益」の「自己資本」に対する比率を計算してみましょう。楽天グループは、IFRSで決算しているので、「資本合計」が「自己資本」を示します。

 自己資本に対する「四半期包括損失」の比率は悪化しています。

 セグメント別の「売上収益」と「セグメント損益」を見てみましょう。楽天グループは、3つのセグメントに分けています。

 「モバイル」だけが損失を計上し、その結果、合計も損失となっていることが分かります。

決算分析の事例 第1回ソフトバンクグループ

 ソフトバンクグループの2022年4月1日から2023年3月31日の本決算について紹介してみたいと思います。

 まずは、損益計算書上の「売上高」と各種損益等は以下の通りです。

「売上高」は増えていますが、各種損益は赤字です。その金額は減っています。

「売上高」に対する当期損失の比率を計算してみましょう。

 「売上高」は増えていますが、各種損益は赤字です。その金額は減っています。

「売上高」に対する当期損失の比率を計算してみましょう。

 「売上高」が増えているのに対して、当期損失は下がっているので、比率としても下がっていることが分かります。

 次に損益計算書項目の一部と資本合計をみましょう。

 「SVF事業」とは、「ソフトバンク・ビジョンファンド事業」です。昨年より増えています。今年度は、巨額の当事業からの赤字を「持株会社投資事業からの投資損益」で埋めていることが分かります。「持株会社投資事業からの投資損益」の内訳の1つが表にも挙げている「アリババ株式先渡売買契約決済関連利益 4兆8千3百8十3億円」です。今回の決済によって、アリババに対する、ソフトバンクグループの持分比率が20パーセントを下回り、持分法適用会社から外れることになりました。いつまでもアリババ株式関連からの利益に頼るというわけにはいかないでしょう。

 資本合計に対する比率で見た方が分かりやすいので、計算してみましょう。資本合計に対する「SVF事業からの投資損失」の比率は以下の通りです。

 比率が悪化していることが分かります。

 キャッシュフロー計算書を見てみましょう。「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」および「財務活動によるキャッシュフロー」のプラスとマイナスの組合せと企業の状況をまとめたものが以下の表です。

 ソフトバンクグループは、前期も今期も「営業活動によるキャッシュフロー」がプラスなので、「営業活動によるキャッシュフロー」がプラスの場合の①~④の「会社の状況」の説明は以下の通りです。

 ソフトバンクグループの各活動からのキャッシュフローは以下の通りです。

 

 昨年度は「営業活動によるキャッシュフロー」と「財務活動によるキャッシュフロー」の黒字、つまり借入の増大による資金を「投資活動によるキャッシュフロー」の赤字、つまり「ビジネスの拡大」に振り向けていることが分かります(②積極投資)。今年度は、「営業活動によるキャッシュフロー」、投資資産の売却による「投資活動によるキャッシュフロー」の黒字、借入の増大による「財務活動によるキャッシュフロー」の黒字をすべて「現金及び現金同等物の残高」増大に振り向けています(③財務改善(変則型))。

 通常は、「営業活動によるキャッシュフロー」と投資資産の売却による「投資活動によるキャッシュフロー」の黒字を「財務活動によるキャッシュフロー」の赤字、つまり借入の返済に充てるのですが、「現金及び現金同等物の残高」増大に振り向けているので、「(変則型)」としています。

自宅で学ぶ決算分析 第6回 元手に対してもうけは何パーセント?(資本利益率)

 前回の授業では、各種回転率について学びました。今回は、安全性の比率である自己資本比率、そして収益性の指標である総資本利益率自己資本利益率について見ていきましょう。

 第4回の最後のところで、総資本営業利益率について説明しました。元手(資本) に対するもうけ(利益)の比率である資本利益率のうち、分母が「総資本」で、分子が「営業利益」の資本利益率が、総資本営業利益率でした。つまり、総資本営業利益率は、以下の算式で求められました。

               営業利益    

 総資本営業利益率 = ────────────────  × 100

                     総資本(資産の部合計)

 

 セブンアンドアイとトヨタの総資本営業利益率は、以下の通りでした。

 

 資本に対する利益の比率である資本利益率のうち、分母が「総資本」で、分子が「経常利益」の資本利益率は、総資本経常利益率です。総資本経常利益率は、以下の算式で求められます。

              経常利益    

 総資本経常利益率 = ────────────────  × 100 

                    総資本(資産の部合計)

 

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

(1)自己資本比率

 前回説明したように、純資産とは、資産から負債を差し引いた額です。純資産の部は,株主資本,評価・換算差額等および新株予約権に分類して記載しなければなりません。このうち、株主資本と評価・換算差額等の合計額は、自己資本と呼ばれます。

 総資本に対する自己資本の割合は自己資本比率と呼ばれ,企業の安全性を示す指標とされています。

 貸借対照表の貸方は「資金源」を示しますが,そのうち他人資本は端的にいえば借金であるため返済が必要であるのに対し,自己資本は基本的に返済を前提としません。したがって,総資本に占める自己資本の割合が高いほど安全性が高いと判断されるのです。


 自己資本比率は、以下の算式で求められます。

             自己資本    

 自己資本比率 = ────────────────  × 100

                  総資本(資産の部合計)

 

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

(2)自己資本利益率(ROE)

 資本に対する利益の比率である資本利益率のうち、分母が「自己資本」で、分子が「当期純利益」の資本利益率は、自己本利益率(Return on Equity : ROE)です。自己資本利益率は、以下の算式で求められます。

             当期純利益 

自己資本利益率 = ────────────────  × 100

                  自己資本(純資産の部合計)

 

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

(3)自己資本比率自己資本利益率

 いま、横浜商事と神戸物産が、両社ともほぼ同じ資産規模で、売上高もほぼ同じとしましましょう。どちらも当期純利益は等しいとします。しかし、横浜商事は、ビジネスに必要な資金を株式発行による自己資本で調達しているのに対して、神戸物産は、資金を銀行借入による他人資本で調達しているとします。

 株式発行による資金調達と銀行借入によるそれとは、資金調達という点では違いはありません。しかし、借入による他人資本については、利息の支払が必要です。それに対して、株式発行による自己資本については、もうけがあれば配当しますが、配当はもうけの分け前なので、費用とはなりません。

 借入によって資金を調達している会社の場合,当然,自己資本は絶対額でも小さくなります。そうすると自己資本利益率(ROE)の算出の際、分母が小さくなるため,自己資本利益率はよい数値となります。

 この点で、神戸物産は有利になります。自己資本利益率を比較する場合,このことも考慮しておかなければ実態を見誤りかねません。

 自己資本比率が低い湖池屋と高いカルビーについては、自己資本利益率で逆転は起こっていませんが、総資本経常利益率よりも自己資本利益率では差が少し縮っていることが分かります。

 

【演習問題解答】

演習問題Ⅰ解答:Aが湖池屋で、Bがカルビーです。


演習問題Ⅱ解答:Aが湖池屋で、Bがカルビーです。


演習問題Ⅲ解答:Aがでカルビー、Bが湖池屋です。

 

自宅で学ぶ決算分析 第5回 各種回転率とキャッシュ化循環日数

 今回は、効率性の指標である各種の回転率について見ていきましょう。回転率は、損益計算書貸借対照表の数値から求められます。

 各種資産の回転率を求める算式の分子は常に「売上高」です。分母に入る資産によって様々な回転率が求められます。以下では、①売上債権回転率(売上債権回転日数)、②棚卸資産回転率(棚卸資産回転日数)、③仕入債務回転率(仕入債務回転日数)、そして④キャッシュ化循環日数について見ていきましょう。

 

 

①売上債権回転率(売上債権回転日数)

 商品を現金と引き換えに販売するのが、現金販売です。一方、例えば、5月1日に得意先に商品を引き渡し、代金は1ヶ月の6月1日に受け取る場合、当社には、「売掛金」という債権が生じます。

 商品と交換に手形を受け取り、その手形が一定期間の後、現金化する場合、当社には受取手形という債権が生じます。売掛金受取手形を合わせて売上債権といいます。

 売上債権回転率は、以下の算式で求められます。

             売上高

売上債権回転率(回) =  ───────────                   

                                    売掛金+受取手形           

 

 回転率は、高いほど良いのですが、慣れないとピンとこないかもしれません。そこで、365を回転率で割ることによって売上債権回転日数が求められます。これは、商品等を引き渡してから販売代金を受け取るまでの平均日数を示します。

売上債権回転日数 = 365 ÷ 売上債権回転率

 

 企業にとって、売上債権回転日数が短いほど良いことは言うまでもありません。当該期間は、得意先に無利息で資金を貸し付けているのと同じだからです。売上債権回転日数を無視して、無理に売上を伸ばそうとすると、黒字倒産ということにもなりかねません。 

 売上債権回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

 ②棚卸資産回転率(棚卸資産回転日数)

 棚卸資産とは、在庫調査によってその有高が確定される資産です。 

 流通業の場合,ビジネスは、前回の授業の図表3に示したように,モノとカネの対流として表すことが出来ます。


 仕入れた商品が、顧客に売れるまで「在庫」として企業に留まります。ニーズのある商品を仕入れれば、在庫として留まる期間は短くなります。逆にニーズのない商品を仕入れてしまうとデッドストックとなり、いつまでも企業内に留まることになります。

 棚卸資産回転率は、以下の算式で求められます。

              売上高

棚卸資産回転率(回) =  ─────────                   

                                     棚卸資産   

         

 棚卸資産回転日数は、棚卸資産回転率を求め、365をその比率で割れば、日数として算出されます。例えば、棚卸資産回転日数が50日と計算されたとすると、商品購入後、平均して50日後に売れていることを示しています。この指標は、短いほど良いことになります。

棚卸資産回転日数 = 365 ÷ 棚卸資産回転率

 

 棚卸資産回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

仕入債務(仕入債務回転日数)

 既に述べたように、流動負債は「比較的早く返済期限が来る借金」です。流動負債には、(1)仕入債務と(2)その他の流動負債とがあります。以下では、(1)仕入債務について見ていきましょう。

 商品を現金と引き換えに仕入れるのが、現金仕入です。一方、例えば、7月1日に仕入先から商品の引き渡しを受け、代金は1ヶ月の8月1日に支払う場合、当社には、「買掛金」という債務が生じます。


 商品と交換に手形を振り出し、その手形について一定期間の後、現金で決済する場合、当社には支払手形という債務が生じます。買掛金と支払手形を合わせて仕入債務といいます。

 

 仕入債務回転率は、以下の算式で求められます。

             売上高

仕入債務回転率(回) =  ───────────                   

                            買掛金+支払手形           

 

 365を回転率で割ることによって仕入債務回転日数が求められます。これは、商品等を仕入れてから販売代金を支払うまでの平均日数を示します。

仕入債務回転日数 = 365 ÷ 仕入債務回転率

 

 仕入債務回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。

 解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 
④キャッシュ化循環日数

  仕入から販売代金回収までの日数と仕入から仕入代金支払いまで日数との差が、キャッシュ化循環日数です。通常は、下掲のスライドにあるように、仕入から販売代金回収までの日数の方が長くなり、販売代金回収前に仕入代金支払いが必要となります。その差の日数、資金不足が生じることになります。

 

 キャッシュ化循環日数について、次の演習問題を計算してみて下さい。

 解答時間3分で計算してください。

 

演習問題Ⅳ解答:

 しまむらのキャッシュ化循環日数は、以下の通りです。


 関西スーパーマーケットのキャッシュ化循環日数は、以下の通りです。


 前述のように、通常は、仕入から販売代金回収までの日数の方が長くなり、販売代金回収前に仕入代金支払いが必要となります。しかし、スーパーマーケット業界では、関西スーパーマーケットのように、仕入から販売代金回収までの日数と仕入から仕入代金支払いまで日数との差について、仕入から販売代金回収までの日数の方が短いので、販売代金回収後に仕入代金を支払えばよいことになります。その差の日数、資金余裕が生じます。そのため、先ほど求めた流動比率が100%未満であっても、安全性に問題はないのです。 

 

【演習問題解答】

演習問題Ⅰ解答:Aが関西スーパーマーケットしまむらで、Bしまむらがです。 

 両社の売上債権回転率と売上債権回転日数は、以下の通りです。


演習問題Ⅱ解答:Aが関西スーパーマーケットしまむらで、Bしまむらがです。 

 両社の棚卸資産回転率と棚卸資産回転日数は、以下の通りです。


演習問題Ⅲ解答:Aがしまむらで、Bが関西スーパーマーケットです。

 両社の仕入債務回転率と仕入債務回転日数は、以下の通りです。

 

自宅で学ぶ決算分析 第4回 立ち食いそば屋の強み(回転率)

 前回の授業では、安全性の指標について学びました。今回は、効率性の指標である資本回転率について見ていきましょう。

 前回までの授業では、上掲の等式の右辺のうちの左側の売上高利益率について学びました。今回の授業では、右側の資本回転率をはじめとする各種回転率について見ていきます。

 売上高利益率の分母の「売上高」と資本回転率の分子の「売上高」とを相殺すると、等式の左辺の資本回転率となります。前回の授業で少し触れたように、資本利益率は、企業の収益性を判断する基本的な指標です。後の授業で詳しく説明します。

 回転率を具体的にイメージしてもらうために、資本回転率から離れて、客の回転率についてフレンチ・レストランと立ち食いそば屋の例で説明しましょう。

 上掲のスライド上の1行目の「客1人当たり平均利益」は、第1回の授業の演習問題Ⅰに出てきました。2行目の「店舗1時間当たりの客数」に客の回転率が関わってきます。フレンチ・レストランの方は、4人掛けのテーブルが2卓で、1時間に客は満席としても1回転なため、8名と仮定します。

 一方、立ち食いそば屋の方は、1度に20人が利用できるカウンターで、1時間に6回転して、120名の客をさばくことができるとします。「客1人当たり平均利益」に「店舗1時間当たりの客数」を掛け合わせて「店舗1時間当たりのもうけ」を求めると、フレンチ・レストランが20,000円であるのに対して、立ち食いそば屋は、24,000円となります。このように最終的なもうけは、売上高利益率だけできまるわけではなく、回転率も重要な要素なのです。

 

(1)総資本(産)回転率

 総資本(産)回転率は、以下の算式で求められます。

           売上高                      

総資本(産)回転率(回) = ──────

                          総資本(産)

  

 自己資本他人資本と総資本の関係を示したものが、図表1です。

 貸借対照表貸方の自己資本他人資本の合計である総資本は、貸借対照表借方の総資産に等しいので、総資本回転率と言っても、総資産回転率と言っても同じことを意味します。

 

 総資本回転率について、次の演習問題を解いてみて下さい。


解答時間1分で考えてみてください。解答は、文末です。

 

 両社の総資本は、以下の通りです。


 両社の売上高は、以下の通りです。

 上掲の数値で、両社の総資産回転率を求めると、以下のようになります。


 製造業の場合のモノとカネの対流としてのビジネスを図示したのが、図表2です。製造業の場合、調達した原材料等を加工して製品とするため、流通業の場合より時間がかかります。そのため、回転率は低くなります。


 一方、流通業の場合のモノとカネの対流としてのビジネスを図示したのが、図表3です。仕入れた商品については、製造業のように加工しないので、回転率は高くなります。


 両社の営業利益は、以下の通りです。

 

 両社の売上高営業利益率を計算すると、以下のようになります。


 製造業のトヨタの場合、加工によって流通業の場合より大きな価値が付加されるので、売上高利益率も高くなります。

 もう一度、売上高利益率と資本回転率、および資本利益率の関係を見てみましょう。

 

 左辺の資本利益率は、右辺の売上高利益率と総資本回転率とに分解することができます。製造業は、加工によって大きな価値を付加することにより売上高利益率を高めるタイプのビジネスです。

 一方、流通業は、低い売上高利益率を総資本回転率を高めて補うタイプのビジネスです。「薄利多売」と呼ばれます。

 

(2)総資本営業利益率

 元手(資本) に対するもうけ(利益)の比率である資本利益率のうち、分母が「総資本」で、分子が「営業利益」の資本利益率が、総資本営業利益率です。つまり、総資本営業利益率は、以下の算式で求められます。

                                            営業利益    

 総資本営業利益率=────────────────  × 100

                           総資本(資産の部合計)

  両社の総資本営業利益率は、以下の通りです。


【演習問題解答】

演習問題Ⅰ解答:Aがセブン&アイで、Bがトヨタ文末です。